MUSIC: なぜ、テイラー・スウィフトは世界最大のポップスターなのか その6(最終回)

テイラー・スウィフト、ついにというか周期通り新曲をリリースしましたね。予定調和的でも、これをやり続けられるということが彼女の素晴らしいところだとつくづく思います。

テイラー・スウィフト
Photo credit: Sebastian Vital on Visualhunt.com / CC BY

 むかしむかし「Red」という4枚目のアルバムをテイラーがリリースしたときに出た記事をコツコツ訳していたら、実は何年もかかってしまった。そしてついに一通り終えてみたら、う~むブログすら引っ越してしまったので、ここで一気にUPしてみます。

元記事はNew York Magazine掲載なので、言い回しが非常にむずかしい。。。読むのかな、こんな記事。。。

www.vulture.com

ここから書いたものですけど、結構長いので気長に眺めるくらいが良いです。

そして、ついに「その6」で最終回です。さいごのさいごを訳して、ちょっとじ~んと感じてしまった!

 

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このごろテイラーは次のアルバムのことばかり考えている。

 

Redツアーの間、彼女は曲を書き続け、アイデアをストックし続けてきた。たくさんの歌詞と数えきれないほどのボイスメモがテイラーのiPhoneに残された。テイラーはオーストラリアとニュージーランドのショーで年を終え、2月になるとロンドンとベルリンでいくつかのショーを行う。しかし、彼女の計画では2014年の大半をニューアルバムのためのソングライティングとレコーディングに費やす予定だ。

「何もかもが心配なのよ」とテイラーは言う。彼女はダイニングルームで腰かけている。「こんな感じで起きるわけ、『オーケー、うまくいっているわ』ってね。午後になると、ムードがかわって何でもできる気がするわけ。今までつくったことのない曲をつくりたくてたまらないわってなるの。夕方になると、ありとあらゆることが恐ろしくなるの。それでね、夜になるとベッドに入る前に曲を書くのよ」

テイラーは新しいソングライターやプロデューサーと仕事をしたいと考えている。しかしマックス・マーティン、シェルバックとスタジオに戻ることにしたのだ。

「はじめにMaxとJohanとスタジオに入りたいの。このレコードがどうなろうとしているのか、その形をはっきりさせたいのよ。わたしには書くべきものがたくさんあるの。自分の感情からなんだけれど、一気にくるのよ。 

でもそれらをRedとはちがうものにしないとね。何度も同じことを書いてもしかたないでしょう?同時に、わたしはアーティストが4枚目か5枚目のレコードでおかすまちがいについても心得ているわよ。みんな素晴らしい曲よりも、イノヴェーションが大切だと思ってしまうの。リスナーとしてもっともひどいことはね、曲を聴きながら、この曲でどんなことをやろうとしているか分かってしまうことね。

こういうことよ。ダンスブレイクがある、でも良く分からない。ラップが入る、でもそこに入れるべきではない。ビートの変化がある、この半年でクールなこと、ハッピーなことみたいに、でもそこに感情はないし、心揺さぶられるものもない、歌詞が生きてこない。わたしはこれまで曲をつくるのにポップにしたいとか、リズムステーションのようにとか、ダンスクラブのようにとかそんなことを込めようとしたことはないの。サウンドを編集しただけなんて望んでいないわ。曲というものにしたいのよ」。

 

曲のテーマについては、テイラーにとってはお決まりのことである。

 

「わたしはクレイジーな愛についての曲だけを書くのよ。わたしが2人の男性とデートしていたとして、何もなければそれについて曲を書くこともないわ。毎日の生活でいろいろなことがあるけれど曲にする価値があるわけじゃないもの」。

テイラーは正しい方向にすすんでいる。ポップミュージックというものは、おおまかに言って、クレイジーな愛を曲に詰め込むことなのだ。しかしテイラーのロマンチシズムはこの四半世紀の価値観からするといささかやっかいなものだ。

Dodai Stewartは「テイラー・スウィフトフェミニストの悪夢だ」というタイトルの記事をJezebelに投稿し、テイラーに釘をさした。記事によるとテイラーは時代に逆行しており、白馬の王子様のロマンスにのぼせ上がっている人物なのだ。*JezebelというのはWebサイト

 

記事にはこう書かれている。

 

『テイラーにとっての15歳というのは、男の子と恋におちて、彼との結婚を夢見ることを意味している。わたしの場合の15歳というのはこうだ。だれかといちゃついて、タバコを試して、酒を飲んでみて、親にウソをつき、アナイス・ニンでも読むことだったのだ。テイラーの品行方正でピュアなイメージというのは、家長制度の中で処女性が大切にされ、純潔を好み、繊細な花の咲く場所でも知っているような女性をほめたたえるような役わりをになってしまうのだ』。

テイラーはビヨンセレディ・ガガ、リアーナたちと比べてもヴィクトリア朝時代の価値観であり、同じナッシュビルから出てきたマイリー・サイラスは言うまでもなくテイラーとはちがう。

ビヨンセたちが表現するのは、女性性を押し出したフェミニストポップなのだ。大きなビートと露出の高い衣装をつかうことで女性の力と自らによる意思決定についてはたらきかける。テイラーの曲というのは完全にそうではない。セックスは音楽の中に見え隠れするくらいで、わずかに慎重に歌詞の中に隠されている。

テイラーは控え目なのだ。とりわけ、これは優れたマーケティング戦略である。ティーンポップのスターダムから大人へと成長してきた、テイラー。古いファンたちはを健全さを保ったまま、その次の世代と両親までを取り込んだ。

 

いまだ、テイラー・スウィフトは「フェミニストの悪夢」なのか?

 

反論もある。彼女のお堅いファッションとダンスは、事実テイラーはコンサートでネグリジェ姿でのたうち回るようなことはしない、彼女をビヨンセたちに比べて古くさいと思わせるだろう。それでも、テイラーはフェミニストたちが敵にしてきたあの男性からの視線については甘くはない。

事実、テイラーのコンサートをみることは啓示的なことだ。ユニークさ、変わった習慣、そしてフェミニズムにも焦点があたる。

わたしは30年もの間、アリーナショーに通ったが、テイラーのコンサートのような大きな叫び声と興奮した観客のあつまるショーをみたことがない。それどころか、より多くの女性たちがいるし、ニューヨークの音楽評論家もいれば、正反対のオクラホマから来た不気味な連中だっている。ジャスティン・ビーバーのショーでさえ、いやもっと言うなれば女性向けセミナーですら、女性比率、年齢層の幅広さはあり得ない。幼いこどもから、ティーン、その下のトゥイーンとその親たち、学生、おばあちゃん、ギャルのような30代のオフィスワーカー(彼女はわたしの後ろで酒瓶をわたしていた)までの人々がテイラーのコンサートにはいるのだ。

テイラー・スウィフトのコンサート会場に足を踏み入れるということは、女性の空間に足を踏み入れるということに他ならない。テイラーはアイスホッケー・アリーナを自分の部屋にかえてしまうパワーを持っているのだ。

テイラーはよいコンサートをする。

以前には、彼女の声は不安定なこともあった。2010年のグラミー賞でのスティーヴィー・ニックスとのデュエットを忘れることができようか、傷ついたバッファローのようだった。最近では彼女の声は安定しておりすばらしい。力づよさに少し欠けるとしても、自信をもって、上品にうたう。コンサートは精巧に演出されており、テイラーはプロフェッショナルとしてふるまう。

しかし、もっとも素晴らしいのは曲と曲の合間にテイラーが観衆にむかって話しかける瞬間だ。彼女の語らいはほとんどソングライティングのようなものだ。このステージで起こることはちょっと風変わりで、ロックスターというよりは、ヒッピーアートキャンプのカウンセラーのようなものだ。

「わたしが良く質問されるのがこんなことなの。どうやって曲をつくるの?何からはじめるの?ただボトルにメッセージを詰めて海に送り出すことをイメージしているだけなんだけどね。

さいころのことを覚えているの。よく曲を書いたものだけれど、学校とうまくいかなかったことについてだったわ。ソングライティングは、むかしからわたしにとってはうまくやっていくための一つの方法だったの。

ジョニ・ミッチェルが言っていたと思うんだけど『曲というのは車で家の帰る途中で思いつくもの』だって。すごいひらめきよね」。

ブリジストン・アリーナでのこと、「All Too Well」の紹介の合間、テイラーはピアノの前に座るとひときわ大きな歓声が起こった。「今夜ここにいるたくさんの人が曲を書いている」。テイラーを古い価値観だとからかう人はそうすればよい。テイラーのメッセージとはそういったものとはまったく別のものなのだ。女性がギターとペンを手に取って何からのアートをつくりだすとき、そのちからは解放されてゆくのだ。

 

彼女の家で、わたしはテイラーに彼女とファンの信頼関係についてたずねた。

 

「なによりも友だちのようなものなのよ。姉妹のようなね。もしくはこう、わたしたち同じ歳よね、わたしが最初のアルバムをリリースしたときお互い16歳だった。そこから一緒に成長してきたのよね」。

「みんなアーティストに対して叫ぶのだけれど、それはアーティストによってちがうのよね。ステージにいろいろなゲストを連れてきたとき、それに気が付いたの。みんな色んな理由で叫ぶの。かわいい男の子にも叫んだりとかね。そしてわたしには『この歌詞!この歌詞こそがわたしの人生なのよ』の叫びなの。

わたしがコンサートで耳にする叫びはそれなのよ」。

*This article originally appeared in the November 25, 2013 issue of New York Magazine.

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ちょっと前ではスタジアムを満杯にできるアーティストは限られていた時代があって、ポール・マッカートニーとかU2とかビヨンセとかそういうアーティストがスタジアムに大量の人々を集めていた。

そんなとき、同じことができたのがテイラー・スウィフトだった。

Reputationツアーも巨大だったけれど、このRedツアーあたりからテイラー・スウィフトというものが巨大化していった。恒例行事であり一大産業となった。

テイラーのコンサートには、メインストリームには居ないような人たちが来る。ビヨンセとかのコンサートに来る人たちがテイラーのコンサートに来るかというと来ないだろう。ビヨンセのコンサートは一軍の人たちが集まる場所なのだから。

テイラーのコンサートは今まで音楽なぞで巨大なアリーナに縁のなかった人たちを集めたことに価値があるのだと思う。うまく表現できていないかもしれないけれど、性的マイノリティー以外にも趣向的マイノリティーの人たちに居場所をつくったような感じがする。パーティーには臆するような人たちもテイラーのコンサートなら足を運んでしまうのではとも思う。

なので、コンサートに行く人を増やしたってのは、すごいと思うんだけどねぇ~。

 

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