MOVIE: マイケル・ジョーダン: ラストダンス 観た

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Photo credit: Kip-koech on Visual Hunt / CC BY

1990年代に中学生か高校生なんかだったので、ナイキが流行した。アシックス、アディダスなんかよりもナイキ。日本の郊外で起こっていたことだけれど、その発信源はアメリカであり、1人のスポーツ選手だった。インスタもYoutubeもない時代に郊外の中学生でも名前を知っている海外のスポーツ選手、今となっては信じられないけれど、それがマイケルジョーダンだった。

時を経て、Netflixオリジナルシリーズとしてマイケルジョーダンが戻ってきた。

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マイケル・ジョーダンマイケル・ジョーダン?名前こそ知っている、偉大なバスケットボールの神様、ナイキのエアジョーダンを売りまくった人、それで?なにがすごいのか、なぜ彼は神様なのか?軽い気持ちで観はじめてしまった。

1997-98シーズン、カメラがシカゴ・ブルズに密着することが許されたときの映像と現在の選手関係者、ジャーナリストのインタビュー、過去の試合動画を含めた膨大な資料を組み合わせて出来ている。ぼくらは1997-98シーズン前のごたごたからマイケル・ジョーダンたちとシーズンを戦ってゆく。

もうシーズン前からチームには混乱がある。よくもまあこの状況でやるよなぁという位に火花が散っている。シーズンが開幕するというのに、大黒柱の1人であるスコッティ・ピッペンは怪我を理由に試合に出ない。デニス・ロッドマンという爆弾も抱えているし、GMとチームの関係はさいあくときている。それでもジョーダンは基本的に一歩も引かないし、NBAを制覇することしか考えていない。その意思に貫かれて全10話は進む。

毎回、チームメイトにもスポットがあたる回もある。今回はスコッティ、今回はデニス、今回は監督のフィル・ジャクソンなど。人となりを知ると漫画の回想シーンを読んだ後みたいに親密感が増す。

いったいこれでどのようなシーズンの結末を迎えるのか、バスケットの神様とはどんなすごいことをするのか。そう思いながらどんどんと回は進んでゆく。

そう気がついたら5話くらい一気に観てしまうのだ。なぜ神様なのかはまだわからないけれど、観てしまうのだ。シーズンは長い、まだまだ続く。

見どころは随所にあって、全10話のうちに毎回盛り上がりと次がどうなるのか!という仕掛けがされていてまったく飽きることがない。素晴らしい。ジョーダンは常に勝つことを考えているし、そのために何でもする。それでも日本のスポ根のようなトーンにはならない。練習もたくさんしているもだけれど、漫画のスラムダンクのような一生懸命さには、はまらない。勝つための厳しさもあるが、どこか大きなものに身を任せているような感覚も受ける。天才としての完璧さというわけでもなく、人間性も善し悪しもある(ギャンブル癖があったり、父親を不幸な事件で亡くしている)。それでもジョーダンが神様なことに変わりないのはこのシリーズを観るとものすごく良くわかる、というより感じられる、腹に落ちてゆく。

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Photo credit: mccarmona23 on Visualhunt.com / CC BY

ジョーダンの両親は父親が技術者で母親が銀行勤めで、彼は比較的きちんとした家庭で育った。プロになってからシカゴブルズでの試合をほぼ全て父親は観戦していて、息子をサポートしていたという。人としての基盤があった上で、一方でギャンブル癖もあったというので、個人的には聖人でもないけれど、プレーはずば抜けた身体能力により人を魅了するので人と神様の間をいったりきたりできる人だったのかもしれないとも思う。ただ、ここぞ!というところで落ち着いて得点を決めたり、やり返すために爆発的なプレーができたりというメンタルコントロールがず抜けていたにではないかと思う。そういう人っていますよね、サッカーの本田選手なんかはもっとうまい人よりも重要なところで活躍する割合が高くて、ものすごく重要なときにふつうに活躍できる技術が飛び抜けている、みたいな。ジョーダンも日本的な努力とか一生懸命よりも深いところで自分を磨いていた。

同時に、観ている間、今のジョーダンがインタビューを受けているシーンがたくさんあるのだが、そのシーンで必ず不安がよぎる。きっと彼自身がそういう未知なものも抱えながら戦っていたのだろう。

ジョーダンがなぜ神様なのかという真髄はこのシリーズを観終わるころに感じる。NBAのチャンピオンシップを3回連続獲得することをスリーピートというらしい。一度引退を挟んで、2回のスリーピート、すなわち6回もNBAチャンピオンシップをジョーダンは勝ち取った。まさに神業だけれど、それだけでは神様にはなれない。このNetflixのシリーズを観ていると、マイケルを無条件に応援してしまう。そして観終わると、心のものすごく深いところが動かされている。単なる感動ではないし、すごいとかそんな簡単なものではない。バスケットボールをプレイするだけでこんなことをできるのはマイケルジョーダンだけだろう。だから彼は神様なのだ。人間だけれど、人の心の深いところを動かす時だけ神様になれるのだ。スポーツで感動する、漫画や映画を観て感動するとはまた別の深いところが動かされる。彼にしか動かせないものを動かしてくれる。もとにはもどれない。

 

観た方がいいよ!ぜったいに!!!!!