IDENTITY:わざと負ける選手はなぜそうしてしまうのか

f:id:atsushka:20201206211939j:plain
Photo credit: *rboed* on Visualhunt.com / CC BY

パトリック・ムラトグルー、セリーナ・ウィリアムズのコーチであり、このドキュメンタリーでわざと負ける選手の扱い方を披露するテニスコーチである。ご存知ですか?

Netflixやるなぁと思うのはこういうちょっとこれまで表に出てこなかった話を映像として出してくるところで、このパトリック・ムラトグルーのインタビューを元にしたドキュメンタリーがあります。スポーツの監督、コーチに焦点を当てたドキュメンタリーで「プレイブック: コーチが語る人生戦略」というシリーズものの中にパトリック・ムラトグルーがいます。

子どもの頃からテニスをやり、プロを目指すものの親の方針で経営者になりました。家が裕福でだったのですね。

自分が経営者になるとムラトグルーテニスアカデミーを設立し、そこで数々の選手を育てました。そして彼はセリーナ・ウィリアムズを観て、自分がセリーナのコーチになるべきだと確信し結局コーチになります。一時期付き合っていたみたいです。

こう書くともの凄くやり手で押しが強くて、自分の願望のためだけに動いている人のような印象なのだけれど、そうでもない。

この彼がインタビューに応えていくドキュメンタリーで最も興味深かったのが「わざと負ける」選手への対処方の部分。

イレーナ・パブロビッチという選手が居て、ものすごく才能がるのだけれど、彼女は試合の流れがわるくなると、わざと負けるようになったそうです。きわどいボールを追わない、検討外れな方向へボールを打つ。試合を終わらせようとしてしまうんですね。

こうなるのは小さい頃からエリートな選手がなる傾向があるそうです。

パトリック・ムラトグルーはここで考えます。何故、わざと負けようとするのかと。勝つために毎日全力を尽くして練習をする。それなのに、試合の肝心なところで手を抜いてしまう。不可解だ。

そこでされに彼は考える。彼ら、彼女たちには才能がある。しかし自信がない。だから格下の選手などに負けると自分を支えていた才能の後ろ盾を失ってしまう可能性がある。だから、わざと負けて自信のない自分を見ないようにする。

どうすればよいか?

パトリック・ムラトグルーは「すべてぼくのせいだ、もうしわけない」と選手に告げる。彼女を責めない。彼女をより支えようとする。

すると、イレーナ・パブロビッチは二度とわざと負けようとはしなかったそうです。支えてくれる人のためにも全力を尽くそうと努めるようになったそうです。言い換えれば、勝つことができればいいので、彼は手段にこだわらないのでしょう。アホな部活の教師なんかは、挫折を自分で乗り越えろ、なんてことを言いそうです。プロなので勝てなければダメで勝てればいいのです。

それに問題をその人のものにしてしまわないで、客体化してあげる方法は心の力学的には非常に重要でその手法をうまく利用できないとメンタルコントロールはできません、ただの努力になってしまいます。しかも最も成果の出にくい努力ですね。意味なし。

ここに彼のプロ根性を見たし、プロ根性とはそういう方向のものなのでしょう。マンガ好きな人!マンガはマンガだからね!

ちなみにパトリックムラトグルーは売り込みに売り込んでセリーナのコーチになり優勝させ、少しの間、セリーナと付き合っていたようです。

やりたいことをやればいいんだよ、そして勝てばいいんだよ、それだけ。

 

プレイブック: コーチが語る人生戦略 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト