カリーヌ・ロワトフェルド インタビュー on Talk Magazine, April 2001

カリーヌ・ロワトフェルドは新しい雑誌「CR」を発行するにあたり、次のような言葉をのこしている。彼女の言葉は力強くしなやかで、知性とバイタリティとユーモアにあふれている。 ピースサインを気軽にする女性であると同時に重みのある女性だと思う。

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Photo credit: Dusty J via Visual hunt / CC BY

わたしたちはファッションを愛している。ファッションはわたしたちを駆り立ててくれる。しかし最近ではファッションにおいてクリエイティビティを表現することは難しくなってきているようにみえる。物事はコントロールされ、計算され、滅多に自然発生することはない。しかしながら、クリエイティビティはファッションにおいて根源となるものである。クリエイティビティがなければファッションは隅に追いやられてしまう。ファッションが必要とするものは、新しい想像の芽が育つことの出来る場所だ。ファッションは服という概念を越えたところにある。ファッションとは生き方そのものだ。深刻になりすぎることもなく、暗く悲観的でもない。いつだってユーモアと自由奔放な空想、そして喜びと美で満ちている。ファッションを前進させてきた出版物を想像してみて欲しい。これが、ファッションとクリエイティビティについての新しい雑誌「CR」へのわたしのヴィジョンだ。

なんと「I WANT TO BE A ROITFELD」というサイトがあって(何だそりゃ(笑))、そこにインタビューが載ってましたよ。


Carine Roitfeld: あなたのタバコひとくち頂戴。

Talk: あなたタバコは吸いませんよね。

Roitfeld: 父は吸うわよ、夫も吸う、わたしはいつもタバコの煙の雲の周りをうろうろしているようなものよ。わたしがこれで困ることはないけれど、男の人の指についたタバコの匂いほどセクシーなものはないと言わないといけないわね。残念なことに、タバコを吸うことってタバコ自体と同じくらいに病みつきになるような動きが伴うのよね。だからあなたのタバコがひつよう。ようするに全ては動作なのよ、自分で自分を動かす動作(ロワトフェルドはタバコを吸い続けている)。

Talk: 今ではあなたはフランス版Vogueの編集長なわけです。ジャンキー(麻薬常習者)のように見えるということで、税関で止められますか?

Roitfeld: わたしいつも税関では止められるの、嫌になるわ。わたしがジャンキーっぽく見えるからか、他の旅行者たちと違って見えるからか、まったく分からないわ。わたし以外のみんなはいつもジーンズにスニーカーで、わたしはハイヒールにスカートなのよ。たぶんわたしが他の乗客よりもシックだから止められるんじゃないかしら。でもだからと言って、わたしを困らせてバッグを引っかき回す理由にはならないでしょ。税関の連中がわたしのバッグに鼻を突っ込んで嗅ぎまわっている内に、ドラッグディーラーがさっさと潜りこんでいるわよ、これ絶対。スタイリッシュに旅行することはわたしの特権なのよ。イギー・ポップに似ているからとか、ハイヒールをはくからとかで、これを止める訳にはいかないの。わたしはタバコも吸わないし、お酒も飲まない。私の知る限り、シック過ぎるなんて理由で逮捕された人はいないはずよ。あの税関の職員たち首になればいいのに。

Talk:あなたはハイヒールで「ハイ(high)」になるんですか?

Roitfeld: マリオ・テスティーノと働き始めたとき、ハイヒールをはき始めたの。マリオはとっても背が高くて、わたしは人を見上げる(look up at)のがきらいなの。尊敬する(look up to)のはいうまでもないわね。(look up at と look up to をかけている。英熟語をみてね!!)ハイヒールを履いて歩くとまったく変わるのよ。より女性らしく感じるし、そのシルエットにも慣じんでくる。そうすると、いつの間にやら1インチだって下げることが出来なくなるのよ。本当よ、ハイヒールじゃ走れないでしょ。でも、女性は走り去るようなことはするべきではない。ときどきは動きまわるけれど、決してシックとは言えないわね。

Talk: あなたのスタイルへの鋭いセンスと的確な眼力は「カリーヌ・ロットワイラー(Carine Rottweiler)」という名称をもたらしました。Vogueの編集長であることが事態を悪化させると思いますか?ロットワイラーとは、ドイツのロットワイル地方原産の牧牛用・警備用の犬種のこと)

Roitfeld: いいえ、カメラに向かってどう微笑めばよいのか勉強しているから。

Talk: キャットウォークでお気に入りのドレスをみるときには微笑んだりしますか?

Roitfeld: キャットウォークで自分の好きなドレスをみるときは微笑まないわよ。そのドレスを着たら自分がどう見えるか想像するのに忙しいもの。

Talk: 朝、身支度を整えるのにどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

Roitfeld: 何を着るのか考えるのにどのくらいの時間がかかるのか?それとも実際に身支度を整えるのにどのくらいの時間がかかるかってこと?この二つは違うものなのよ。朝はお茶をすすりながら5分くらい重大なファッションへの問いかけについて思案するの。そしてつぎの10分をクローゼットでついやす。ほんとうに素早いのよ。わたしの服はきちんと整理されているし、わたしは同じ服、同じスタイル、同じマノロ・ブラニクをえらぶようなところがあるからね。自分のスタイルに固執するところがあるの、だって自分らくし見えないのは嫌なんだもの。そんなことは滅多に起こらないけれどね。

Talk: ほとんどのファッション・エディターがキャットウォークで目にしたものを切り取ってきて、雑誌のページ上に張り付けることをしています。あなたはいつも違ったデザイナーたちの服をミックスしてマッチさせることをしてきていますよね。

Roitfeld: わたしはキャット・ウォークでみたものに盲目的に従うよりは、あなたが言うようなミックスとマッチングこそがまさにフランス的な特徴だと思う。確信しているのは、デザイナーたちは雑誌では自分の作品のトータルルックをみたいのだと思う。L'Officiel のような雑誌はよろこんでそうするわよ。でもわたしはファッション・エディターの仕事をもっとエキサイティングなものだと考えたい。単にキャットウォークから服をひろいあげて雑誌のページの上に置くだけのものとは違うの。

Talk: 何故 Joan Buck によるフランス版 Vogue の時代は終わったのでしょうか?

Roitfeld: 課せられた課題は高いものだったわね。わたしが思うに、Joanは雑誌の売り上げを強固なものにすることには確かに成功したの。コンデナストはクワイアーボーイズが経営する会社ではないし、JoanはVogueに長い間在籍してたの(1994年の6月から)。これの意味するとこは、Vogueは商業的に機能してきたということ。Joanはものすごく知性的で才能のあるエディターよ。でも、おそらくJoanは視覚的センスというよりは知的センスの方が強かったと思う。わたしはJoanを尊敬しているし、彼女の功績を称えたいと思う。Joanにはわたしに怒りをぶつけて欲しくはない。でも、VogueはJoanの時代のものとはまったく違っていくでしょうね。わたしはそれがより良くなっていくとか、そういうことをいうつもりはないの。でもVogueは写真とファッションにフォーカスしていくことになるのは確かね。

Talk: あなたはフランス版Vogueの伝統的な役割に再帰することを望んでいるんですか?ホルストマン・レイ、ギイ・ ブルダン、ヘルムート・ニュートンたちがVogueのために撮影をした、ショーケースの時代のように。

Roitfeld: 特徴というのは、強くあるべきね。フランスの女性たちはおばかさんとは程遠いから。でも、わたしは雑誌はヴィジュアルでより鋭いものになることがあると思う。ヘルムート・ニュートンのような人たちに、Vogueに貢献してくれるよう魅力たっぷりの攻撃をしかけるつもりよ。わたしはファッションの編集の世界を変えてきたわ、今は写真家たちのドリームチームをつくっているの。(ヘルムート)ニュートンはリストのトップね。マリオ・テスティーノ、イネス・ヴァン・ラムズウィールド、テリー・リチャードソン、ナサニエル・ゴールドバーグたちはもう2月号の撮影を終えたところ。でも写真家を固めてしまう前に、クレイグ・マクディーンやデイヴィッド・シムズのような人たちに声をかけて試してみるべきだと思う。わたしの新しい仕事は、たくさんの人を巻き込んでいちゃつくことなのよね。

Talk: 何故オスカーにアズディン・アライアを着ていったのですか?グッチではなく。

Roitfeld: オスカーの夜に他のみんなと同じように見えて終わるなんて嫌だからよ。アズディンのことは何年も知っていたし、彼のドレスを着るのに「カムバック」を待つなんて必要はないって思ったの。(90年代に入ると、アライアはコレクションの参加をやめ、自宅兼工房で仕立てにこだわる顧客を選ぶ経営スタイルに切り替え、大量生産からも手を引いた。)

Talk: スモーキーアイ、ロックン・ロールヘアー、ハイヒール。あなたはいつもトム・フォードのミューズであり、典型的なグッチ・ガールでした。Vogue の女性になるにあたって、これまでのイメージをどのように拭い去っていくつもりなのでしょうか?

Roitfeld: トム・フォードがわたしを発明したわけじゃない。グッチへの仕事だって、わたしを公の目にお披露目した訳じゃないのよ。グッチで働きはじめるずっと前からわたしはこうだったのよ。何でVogueのために変わる必要があるの?トム(フォード)が彼の女性というものをわたしに投影しているからと言って、わたしがサンローラン・ガールやVogueガールよりもグッチ・ガールだ、なんてことはないの。わたしはわたし。わたしの心はパパのところにあるのよ。

Talk: ケイト・モスの表紙、マリオ・テスティーノの写真、トムフォードの経歴、トム・フォードのサンローランと同じ黒と白のテーマ、あなたの手によるフランス版Vogueはグッチやサンローランのカタログのようにみえませんか?

Roitfeld: いいえ。よくみてちょうだい。そうすれば、Diorもあることに気づくと思う。ケイト・モスがVogueの表紙とグッチのアド・キャンペーン両方に顔を出しているのは、偶然の一致ってやつよ。それにケイト・モスは表紙でバレンシアガを着ているの。バレンシアガは今シーズンの見物だったし、ケイト・モスは今シーズンの顔だったのよ。トム・フォードはポンピドゥー·センターで巨大なポップアートの展覧会を開催していて、ちょうどサンローランでの最初のコレクションを発表したところね。キー・ストーリーとストロング・ファッションを共存させることで、わたしが魂を売ったということになるなんて、まったく理解できないわ。

Talk: 今やあなたはフランス版Vogueの編集長なわけですが、イブ・サン・ローランとグッチのコンサルティングは続けるつもりですか?

Roitfeld: コンサルタント契約をしていたプレタポルテのショウの後、正式には4月2日からフランス版Vogueで働き始めるの。そうなったらわたしはVogueのことで手いっぱいで他の仕事なんて出来ないわよ。新しいチャレンジが好きよ。たぶんいつの日かわたし、映画スターになるんじゃないかしら。映画スターになりたいわね。

Talk: フランス芸術ですか、それともハリウッドの超大作?

Roitfeld: ハリウッドよ、決まってるでしょ!でもそれって国際的じゃなくちゃね。どう思う?シャーロット・ランプリングの代わりに、わたしで「愛の嵐」のリメークとかどうかしら?フランス映画ではない理由の一つは、いつだって自分の国だと才能を評価してくれるのが遅いからよ。イギリス人たちがわたしの記事をとりあげてくれる最初の人たちなの。面白いでしょう?だって、イギリス人が外国人をどれだけ嫌っているか、みんな知っているもの。でもね、わたしには光栄なことだった。

Talk: プレスがグッチのショウを酷評したあとには、どのように感じましたか?

Roifeld: あれは建設的な批判ではなかった。まったく意地が悪いものだったのよ。トップに上り詰めると、みんなそれをこきおろそうとするの。

Talk: 批評家たちは何故トム・フォードをやりこめようとしているのでしょうか?

Roitfeld: ファッション業界で、彼は全てを手にして突如あらわれたからよ。みんなは彼のことを知らない。トム・フォードがグッチで仕事をはじめたときのことを覚えているわ。彼はマリオとわたしをキャンペーンのために呼び寄せたの。マリオもわたしもトムの名は聴き覚えがなかった。彼は一夜にして億万長者になったわけでもないし、彼の成功は木から落ちてきたわけじゃない。トムはたとえどこにいようとも、強い決意をもって仕事に励んでいるわよ。パリジャンというのは、テキサスの人にカウボーイハットをかぶって、投げ縄を持って馬に乗って街を疾走してるイメージを持っているように見えるわ、サンローランもね。でもトム(フォード)はサンローランという馬を扱うのは少々きびしいものになるってことを知っていたのよ。

Talk: このような重要な立場のポジションに就任することへのあなたの準備はできていると感じますか?

Roitfeld: わたしは脚光を浴びることに慣れていないし、特段にインタビューが好きな訳でもない。でも自分で発言したことを雑誌でみる方がそうしないよりはいいわね。コンデナストがわたしにフランス版Vogueの舵とりを任せてくれたのには驚いてはいないの。つまり、すでにこの雑誌についてはすべて読んでしまっているんだから。

Talk: 編集者としてのどんな「声」をこのVogueに与えたいと思いますか?

Roitfeld: 自分自身のもの。わたしは典型的なVogueの読者。ショッピングが好きで、ファッションにも理解があって、お出かけもする。だから想像するに、読者調査をするにはうってつけの存在よね。わたしの一番の関心ごとは何をするのか、ということね。あの映画観たいのかな?あのドレス着たいのかな?わたしは興味もってるのかな?それにわたしは、みんなが買いたいと思うような服をちゃんと雑誌の上で見られるようにしたいと思っているの。みんなに表紙の女の子のようになりたいって思ってもらわなきゃね。髪を小さく束ねて透けたスリップを着た幼い女の子がカメラを背にしてページの隅に不機嫌そうに座っているなんて興味ないもの。強さを持って、健康的で、自信にあふれた女性を取り上げたいわ。本物の女性をね。

Talk: スタイルアイコンと母親の二つをどうやって両立させているんですか?

Roitfeld: わたしは規律のとれた人間だとは言うつもりはない。だって規律のとれた人たちってちょっと哀しいところがあるでしょ。わたしはあたまの中がいくらか整理されているのよ。

Talk: イヴ・サン・ローラントム・フォードによるサンローラン・イブ・ゴーシュのショウではなく、エディ・スリマンのDiorのショウに現れたのは何故だと思いますか?

Roitfeld: 思うにイヴとピエール・ベルジェカトリーヌ・ドヌーブは以前の子分を応援するためにDiorにいたのよ。エディ・スリマンイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ・オムのディレクターだった)パリジャンの上流気どりね。わたしはいつもファッションが「ショウの最前列のどこに誰が座っているか」みたいな政治的なことに陥っているのを見ると哀しくなる。LVMHとGucciはどんどんと「帝国の逆襲」みたいになってゆく。わたしは自分の新しいポジションについてよおく認識している。こういう状況の矢面に立つことになるのよね。ハイヒールを履いているときには、卵の殻の上を歩くことは難しいの(人の気分を害することもある、という意味)