アナ・ウインター 小話 その12 アナ様、iPad持ってるよ:アナ・ウインター インタビュー by Humberto Leon

アナ・ウインターが実際にこたえているインタビューがテキストとしてインターネット上にある数は少ないけれど、これをちょこちょこと読んでいくとものの見方が変わっていく。アナはある意味で恐れられているけれど、インタビュアーによるネガティブな要素を含んだ質問や、ともすれば真面目に受け答える方が状況がこんがらがるような質問にとてもポジティブに現実的にこたえている。話の要素を明確にするのではなく、自分の向けたい方向に持っていくのが上手い。

変にお勉強して、論理的思考なんてものを学ばなかったからかな。アナは常に戦略的なようであって、直感的。理論的であるようで感情的。そういう側面に話しを持ってゆくのが上手い。常に思うけれど、組織のトップに立って人を率いていく人はこういう両方の側面を自分の中に持っていて状況に応じて使い分けることが出来る人たちなのだと思う。

つまり、どんな質問にもきちんとした答えがある訳じゃない。それは人がやることなんだから当たり前ですよね。でも下手な人ほど、答えがあると思ってしまう。というより思ってしまっていたり、答えがなくてはいけないと思ってしまっている。答えがある方がおかしいことが存在する、ということをアナ・ウインターは知っている。だからアナ・ウインターはアナ・ウインターをやっている。

でも、何でこのインタビューが気になったかと言えばアナ・ウインターが iPad を持ってるってことが分かったから!!

「アナ様、iPad 持ってるよ!!」って言いたかった!! 

元の記事は Anna Wintour Interviewed by Humberto Leon という記事です。2010年の8月23日にポストされてます。2009年にFNOをやって、その二回目の開催について話してます。そう考えるとリーマン・ショックを逆手に取って、FNOを開催してしまう、ピンチはチャンスとするアナ・ウインターってすごい人ですね。

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アナ・ウインターとファッションについて話しをするということは、彼女の大きな影響力以上に、真にインスパイアさせてくれる何かがそこには存在する。 キャロルと僕が FASHION'S NIGHT OUT と他のいくつかの話題についての話を聞くためにアナのオフィスに招待されたとき、アナがファッションの世界についてどれだけ情熱的で好奇心旺盛かということを知り、僕らは心を打たれた。

アナにまつわることをまるで追っかけのように求めている自分たちを発見して、僕らはおどろくこととなった。「Like a Prayer」時代のマドンナについて、アナの iPad、今は無き Soho の眼科医、1998年にVogue の表紙を飾ったジーンズの出所、そしてもちろんのこと、この日の最大の目玉は、アナが世界中の小売り業界を再活性化させるために昨年からすすめてきたイベント「Fashion's Night Out」だった。僕が思うに、僕らがアナと同じく感じていることの一つはショッピングは楽しい、ということだ。そして小売りというものは楽しいものであるべきという考えだろう。

僕が思うにアナと分かち合うものの中の一つに、ショッピングの楽しさというものがある。また、小売り業というものは楽しくあるべきだ、という想いがあって、それこそがオープニング・セレモニーがこの「イベント」(Fashion's Night Out のこと)の一部であることへの自然な理由でもある。

Humberto Leon: 今年の Fashion's Night Out (FNO) の新しいところはどんな点ですか?
Anna WIntour: 今年は、イベントの準備からCBSのドキュメンタリーが入るの。それと世界のトップモデルたちによるファッションショーをやる予定、これはニューヨークの歴史の中でも最大のパブリック・ファッションショーよ。カーニバル・スタイルのお祭りになるわね、規模を大きくして凄くしたというだけでなく、より沢山の都市と小売業者が参加するイベントになるということね。.

HL: 聞くところによると、Vogue は今や新しいファッションウィークのホーム会場でもあるリンカーンセンターで大規模なFNO用のファッションショーをやるとか。見どころは何ですか?
AW: 伝統的にショーは産業用のイベントよね。わたしたちはショッピングをする人たち向けのショーをするので、そこがユニークな点になるわね。ショッピングをする人たちは、世界でも名の知れたモデルたちから最高のトレンドを見るだけじゃなくて、Fashion’s Night Outではそういったトレンドの商品を買うチャンスがあるの。どんなスタイルやお財布事情だとしても、誰でも最新のトレンドを自分の好みやワードロープに取り入れることが出来るのよ。

HL: 海外でのFNOはどうやってニューヨークと同じようなインパクトを持つものとなるのでしょうか?
AW: 昨年は多くの都市でイベントは大成功だったの。昨年に加えて、3つの国が今年のイベントに参加することを決めた事実は昨年のイベントが成功だったということの証ね。重要なところは、FNOはファッションをお祝いするものなのよ。それぞれの都市が、自分たちのカルチャーにそれをどう仕立ててフィットさせるべきなのかを一番良く知っているわ。 でも、面白いのは一連の流れの要素なのーお店はお客さんを呼び込むためのクリエイティビティーを率先して取ろうとする。どの都市でもお店の外でユニークな状況をつくって、ショッピングする人たちとファッションをまったく違ったレベルで結びつけることを考える必要があるのよね。

HL: テーラーとしては、お客さんに本当に楽しくて、エキサイティングで、新しくて、新鮮なことを提供するには、FNOは最高のものだとオープニングセレモニーで気づかされました。これはFNOを開催するにあたり、想像出来ていたことですか?
AW: もちろんよ。オープニング・セレモニーは自分たちのカスタマーを知っていて、カスタマーの興味や性格、ショッピングの習慣に応えているリテーラーの良い例じゃないかしら。お店は常に流行のもので、エキサイティングだから、みんな何度もひき返ってくる。 それがわたしたちが世界中のFNOに望んでいる縮図のようなものだし、9月10日に起こるであろうことね。

HL: 予算や流通のことは頭に置かずに、FNOへの空想をふくらませてもらえますか?
AW:今年の印象的なラインナップをみると、もうすでに現実として幻想的なものをみているのだと思う。 

HL:あなたから見て、最初のFNOからファッション業界は何か変わりましたか?
AW:消費者マインドが復活することは信じているの。みんな外に出てショッピングすることが戻ってきたのよ、その前の年にあった後ろめたさや心配事もなくってことよ。(リーマンショックのことを言っている)それだけじゃなくて、デザイナーとリテーラー、競争相手とそうでない人たちの間にコミュニティを打ち立てた。そしてアメリカン・カルチャーとアートのエキサイティングなところだったり、そのもの自体をまとめ上げたのよ。世界中のファッション・シティがFNOの名のもとに(cause という言葉をアナは使っていて、英語では時にコーズというのを大義みたく使うけど、それ程大きな意味じゃないだろうなぁ。。。)一つになる時が来た年なのよ、それってすごいことだわ。

HL: 10年後のFNOのヴィジョンは何でしょうか?
AW:テーラーとカスタマーがファッションをお祝いするようなより壮大で、より良いアイデアを見つけていくことかしらね。

HL: ファッション・ブログを読みますか?読んでいるのであれば、どのブログがお気に入りですか?
AW: もちろん、ブログは読むわ。Vogue で沢山のブロガーを特集してきているもの。 Hanneli Mustaparta と Rachel Chandler は定期的に Vogue.com に寄稿してくれるのよ。

HL: ファッション・ブログが Vogue 自体にどんな影響を与えると思いますか?
AW: どの産業にもおける進化みたいに、新しいものは自分たちのやっていることをより良くしていくことを求められるのよ。Vogue の深みのある記事や美しいファッションストーリー、これらはファッションという文脈の中でアートをカバーするものだけれど、そういうったものがブログ上にはないわね。であれば、ブログは Vogue により深みのあるストーリーをもった記事を書くようにさせてくれるの。でも Vogue とブログは競争相手じゃないもの、互いに違うマーケットへ供給しているのだから。

HL: 写真家やファッション・エディターはインターネットの世界に存在できるのでしょうか?
AW:エスであり、実際に存在しているわ。彼らは Vogue のページとは違った表現方法をしていて、お互いを補うようなものを提供しているの。どの媒体も読者に自分たちの声を届けることが一番の目的よ。同じ形にあてはめて提示することにこだわってはいない。読者と媒体がどう対話をするかをみているの、それが読者に提供しなければならないものだとわたしたちは感じているの。

HL: あなたの最初の Vogue の表紙ではクリスチャン・ラクロワのジャケットにジーンズを組み合わせましたね。そのアイデアはどこから来たのですか?当時としては革新的なことでしたよね?加えて、今も若者の文化からインスピレーションを得るようなことがあります?ストリートスタイルの中であなたが興味を惹かれるようなものはありますか?
AW: まず、あの表紙はアメリカの消費者に向けてヨーロッパの美学を解釈する初めてのことで最先端なものだったわね。ストリートとストリートカルチャーにクチュールをもちこみ、Vogue にマドンナの Like A Prayer時代をもたらしたわね。ファッションにおいて、パーソナルなスタイルが大切なんだってことを認識させるものだったし、それこそVogue がこれまでやってきたことなの。

(注)アナが編集長としての最初のVogueの表紙ではモデルが十字架をあしらったジャケットを着ていて、この表紙は物議をかもした。同様に、マドンナのLike A Prayer では燃えさかる十字架をバックにマドンナが熱唱するPVが、カトリック教会から非難を浴びたことで有名なので、それをもじっているのだと思う。。。間違ってたらごめんなさい。。。アナ様もジョークを言うのね(笑)
 

HL: ニューヨークでのナンバー1ショッパーは誰だと思いますか?
AW: ニューヨークは流行に敏感な街だし、ナンバーワンと呼ぶに相応しいショッパーの人たち、名もなきショッパーの人たちよ、それが沢山いるもの。

HL: ご自分のスタイルへの感覚は何から影響を受けますか?
AW:スタイルは常に、その個人の個性や趣味趣向を表現するものであるべきだと思っている。

HL: もう閉店してしまったというニューヨークでお気に入りのお店というのは何ですか?
AW: プリンス・ストリートに眼科医がいたのよ、素晴らしいサングラスがあったの。残念なことに今はワイン・ストアになってしまったわ。

(注)アナのサングラスは度入りのメガネレンズという噂なのです。

HL: iPad を持っていますか?
AW: ええ。

HL: 僕らのFNOでのコンセプトはクリニャンクールやヴァンヴのような素晴らしいパリの蚤の市になぞらえたものです。蚤の市のどこかに行ったことがありますか?もしあれば、何か買いましたか?
AW: パリにはたいてい仕事で行くから、蚤の市に買い物に行くようなことはしないの。でも素晴らしい場所よね、すごく歴史があってファッション業界で重要な役割を果たしている。

HL: ご存じの通り、今年はフランスとコラボレーションします。フランスでお気に入りの場所があれば教えていただけますか?ショッピングに最高の場所など。
AW: パリには素晴らしいショッピングエリアがたくさんある。その「通り」、「通り」によって違ったテイストをもたらしてくれるから、自分が何を欲しいのかによるわね。

HL: ニューヨークにあれば良いと思う場所は?
AW:ヴォージュ広場が好きね。ああいうところがニューヨークにもあればいいと思う。

HL: ホテルのバーで最高のことろは?
AW: リッツのバー。

HL: では最後に、お気に入りの隠れスポットは?
AW:言ったら隠れスポットじゃなくなるでしょ!