Christian Dior 次のクリエイティブ・ディレクターは?

どうでも良い人には、本当にどうでも良いことなんだろうけど、世界はジョン・ガリアーノJohn Galliano)によるクリスチャン・ディオールChristian Dior )を失ったままなんです。ガリアーノが最高か否かは個人の感性によるだろうけど、個人的には未来を感じさせてくれる彼の Dior の世界は最高に好きでした。なので、次の Dior のクリエイティブ・ディレクターが一体誰になるのか興味津々なわけです。ついつい、Google Alert を作ってしまうほどに。

つい最近の記事でフランスのファッションコメンテーターの Colin McDowell という人が、こんな風に言っています。

ジョン・ガリアーノの次のクリスチャン・ディオールは「untested(試されていない)」なデザイナーが舵を取るべきだ

「untested」=試されていない、つまりは全く新しい才能が生まれてくる可能性を期待しているところが、さすが!!イブ・サンローランクリスチャン・ディオール亡き後、若干21歳にしてディオールの名を継ぎイヴ・サンローランはフランスを救った。偉大なるディオールの伝統は続きます」と言わしめたので、同じことが起こっても何ら不思議はないと思う。

マーク・ジェイコブスやラフ・シモンズの名前が挙っている、Dior のクリエイティブ・ディレクターの座。みんな相応しいのかもしれないし、結局のところベルナール・アルノーがアナ・ウインターに相談しているのかもしれない。ジョン・ガリアーノはそうやって決まったのだから。ただ、同じことを繰り返しては Dior の名がすたる。Dior は新しいものを切り開く象徴でなくてはならない。普段に着ることの出来ない服をパリコレで発表して、観客の感性を揺さぶらねば、それは Dior ではない。年に二回の Dior コレクションの発表、加えて年に二回の自身のブランドのコレクションの発表、極めつけはオートクチュールコレクションの発表という死のロードを歩み、ぼろぼろになりながらもジョン・ガリアーノのコレクションはあらゆる讃辞を越えて素晴らしかった。

Dior が Dior であり続けるならば、ジョン・ガリアーノのことは忘れよう、新しい才能を世に送りこむのが Dior の使命だ。それが出来る人間が何人存在するのかは全く疑問だけれど、未来を託すのが Dior であって欲しいよ、ベルナール・アルノーさん!!

今よりも時間的にはちょっとだけ昔、技術的には大昔、2006年にある外資系のソフトウェア会社に僕が新卒で入社したときの新卒研修でのこと。研修では、ベンチャー企業をつくりそこで新しいPCを開発するまでの一連の流れを仮想的に体験した。それを今思い返す、長年同じことしかやっていなくて固定観念にとらわれたおじさん達ほど、やっかいなものはいない。

僕らのチームは男二人と女の子二人で、物理的にPCというものが何から成立しているのか(マザーボードとかメモリやハードディスクすら知らなかった。でも入社出来たんだから仕事って不思議ですよね)少しなりとも理解しているのは一人しかいなかった。もちろん、僕はPCに興味を持ったことがなかったので、何も知らなかった。そこで、とにかく分からんので簡単なPCを作ろう、ということでみんなで無い頭を捻って二つアイデアを出した。

A. 一つはインターネットとメールだけ出来れば十分という格安のPC
B. もう一つはタッチパネル式で簡単に写真や動画を見られるPC

そのアイデアを研修の講師のところに持って行ってプレゼンをした。講師は某大企業のメーカーの方でこう言った「インターネットとメールとか簡素なものじゃなくて、もっと分かり易く目ぼしいものがないと売れないよ。それとタッチパネルのPCなんて、写真や動画を観たいんでしょ、画面が手で汚れたら意味ないじゃないか。誰もそんなもの買わない」と。そう言われて、社会人経験に乏しい僕らは素直に言われたことを聞いて、企画書を直しにかかった。なんて素直なんでしょうか。今、振り返ると、ああ~と思ってしまう。

A. 一つはインターネットとメールだけ出来れば十分という格安のPC⇒ネット・ブック
B. もう一つはタッチパネル式で簡単に写真や動画を見られるPC⇒ipad に近いもの

だったのに、某大企業のメーカーから来た講師の方にそんなものPCじゃないと言われ大人しく引き下がってしまったのでした。これから仕事をするという前提における研修で言えば、駄目だしをするのが講師の方のお仕事で、駄目だしをされて構想を練り直すというのが研修を受ける立場の新卒社員のあるべき姿だったのだろうし、実際に僕らはそうしてしまった。でも、これが実際に仕事の現場で起こっていたら、それは恐ろしいことだと思う。素人でも何でも良いのでアイデアを公平に判断出来る人がいなくて、過去の延長線上(しかも偉大な過去ではないですよ)を基準とした評価を繰り返されたら、どんな人材も簡単にスポイルされて行ってしまうのでは?こういうことが、某大企業のメーカーでは日常茶飯事に起こっているのかしら?

まあ、それは本音ではどうでも良い。少なくとも Dior で起こらなければ。だから Colin McDowell さんの言う「untested」なデザイナーがクリスチャン・ディオールのクリエイティブ・ディレクターになることを願うばかりである。だって、世界からPCメーカーが一つ無くなっても困らないけれど、クリスチャン・ディオールクリスチャン・ディオールでなくなったら、それは相当困る!!

他人に期待し過ぎて、自分の人生をおろそかにするのは勿体ないので、まずは自分の人生を頑張ります。駄目出しとかどうでもいいから、説得するとか、自分を押し通すとか、自分の感性や信じるものに忠実に生きていこう。