MUSIC: なぜ、テイラー・スウィフトは世界最大のポップスターなのか その4

自分のことを客観的にみることができたら大人になってゆくと思う。テイラーのことを色々言う人はいるけど、まずは彼女くらい曲を書くとか、それ位の同じだけの努力をしてからでないと同じ土俵には立つことができないのだと思う。そこでしかみえない景色が絶対にある。

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しかしテイラーにとってカントリーミュージックとの関係性は単にキャリアのためだけではない。

ナッシュビルは音楽の街で、テイラーは第一級の主要なソングライターでミュージック・ロウの職人気質と、ストーリーテリングの価値観に染まっている。

 

テイラーのデビューアルバムの時点から、それは明らかだ。やせこけた少女が自分で作詞作曲したしっかりとした歌を歌う姿をみて、みな驚いた。キャッチーなヴァースがあり、歌いたくなるさらにキャッチーなコーラスへとなだれ込む、気のきいた歌詞とともに。これらは名だたるカントリーミュージックのソングライターたちがやってきたことである。

テイラー初のカントリーチャートNo.1ソング「Our Song」は高校のタレントコンテストのために書かれた曲だ。彼女は新入生だった。語り口の始まりから、最初のヴァースであなたの耳を捉える。歌詞はちょっとしたメビウスの帯のようにもなっている。ティーンエイジャーのロマンス物語で同じ状況が繰り返えされ、最後のヴァースでテイラーはソングライターであることを見せつける。

 

 “I grabbed a pen / And an old napkin / And I wrote down our song.”

わたしはペンを手に取り/古いナプキンに/わたしたちの歌を書いたの

 

どのアルバムでも、彼女はその職人気質なところを洗練させてきた。「Mine」でのリフレインを考えてみて欲しい。

 

 “You made a rebel of a careless man’s careful daughter.” 


careless man=父親

careful daughter=テイラー

 

careless(気遣いのない)な父親をもつ、careful(臆病な)な娘を rebel(反逆者)=臆病でないように、made(してくれた)。みたいな感じかとも思います。恋に前向きにしてくれた、とかそういう意味だと思います。

 

これはとても巧みな言い回しだ。ちょっとした奇跡のようなものだ。小説の背景を10ワードと2つのヴァースの曲にパッキングしてしまった。

 

テイラーはパフォーマンスをやめてただのソングライターになるときを想像出来ると言った。

「40歳になって、だれもキラキラしてドレスを着たわたしをみたいとは思わなくなったらこうするわね。『いいわ、スタジオに行って子供たちに歌を書く。とても素敵な引退プランじゃない』」

おそらく彼女はそうするだろう。しかしテイラーの曲はとても風変わりで、個人的過ぎ、誰にでも合うものではない。テイラーの両親は彼女をジェイムズ・テイラーにちなんで名づけた。そして彼女は70年代フォークの魂を持っている。テイラーは告白者であり、回顧者である。

 

「Red」では、テイラーは流行りのポップスへと大きな変貌を遂げた。

スウェーデンのヒットメーカー、マックス・マーティンとシェルバックとの共作で三つの曲を書いた。マックス・マーティンとシェルバックはこの10年半の間に山ほどのヒット曲をつくりだしてきたのだ。「We Are Never Ever Getting Back Together」、「I Knew You Were ­Trouble」、「22」でマーティンとシェルバックによる切れのいい、パンチのあるサウンドに出会う。

それでもどの曲であっても紛れもなく「テイラー節」があるのだ。マーティンが書く曲とは違い、ケイティペリーやPinkやらのアーティストが歌っても様になるような曲とは違うのだ。「22」のキーラインを聴いてみて欲しい「We’re happy, free, confused, and lonely at the same time / It’s miserable and magical」のところだ。

これぞテイラーの歌詞だ、流麗だが正確、自己陶酔だが客観性もある。若い女の子の荒れ狂う胸の内を「まさに」と言いあらわす言葉をヒットラジオから耳にしているのだ。

 

「生の本当の感情をみんなの前で感じることは、ちょっとしたものだと思うの。わたしはこわくてとてもできない。もしそうできたとして、現実の人間でいたいわよ。わたしは自分のファンの前で正直であれたらそれでいいの、いいときもわるいときもね。わたしは自分の人生が好きだし、このキャリアを愛している、友達は大好き。でも、人生はいつだっていいようにはならないわ。だから、わたしはいつもうまくいくような歌は歌わない」

 

そう、テイラーはそんな歌は歌わない。

 

テイラーは12歳のときに人生で2曲目の曲を書いた。中学校での追放を嘆いた曲は「The Outside」と名付けられた。(この曲はファーストアルバムに収録されている)テイラーは16歳のときにハドソンヴィルのハイスクールを中退した。しかし彼女の書く歌は学校というものから離れたことはない。彼女は未だに、あの学校社会というものにあるカースト、派閥、社会的ヒエラルキーに取り憑かれている。