アナ・ウインター 小話 その17 アナ様にきいてみよう アナ・ウインター インタビュー on WSJ, Feb 2009

アナ・ウインター インタビュー on WSJ, Feb 2009

頭の中の世界がかたよっているから、かたよった見方をするのだけれど、それが人ってもんだと思う。かつて、ノエル・ギャラガーはロックスターになった気分のことを曲にして「Rock'n Roll Star」という曲を書いた。名曲。これ以上のものは数えるほどしかない。

アナ・ウインターはこのインタビューでいくつかの質問に答えている。そして、もしデザイナーの名前やブランドの名前、そしてアナ・ウインターであるという、うがった見方を取り除けば、彼女が伝えたいのはファッションに対する喜びを単に感じて欲しいということに尽きることが少しだけ分かる。彼女が着目しているのは、まず感情の部分であってブランドやデザイナーの名前じゃない。

そして自分のやることに対してポジティブな感情を加えながら答えている。それは理屈による正しさとは別の「正しさ」、人が感じるある種の「正しさ」がある。だからアナのことは、嫌いな人は嫌いだろうし、好きな人は好きなのだと思う。

Just Asking: Anna Wintour
A Tastemaker in a Changing Time
February 14, 2009

 
By RACHEL DODES
 
Vogue の編集者が消費主義に異論を唱えるようなとき、それは不景気にほかならない。ニューヨークでのショウに向かう前、ファッション界の実力者アナ・ウインター、トープ(灰色がかった茶色)のマノロ・ブラニクのブーツ、キャロリーナ・ヘレナのシースドレス、ツイードのコート、大きな毛皮の襟はアナの肩にかかっている。そのアナは彼女のオフィスで腰かけている。デスクの上には完璧で新鮮な花束がある。ここはコンデナストの中心部、マンハッタンの本社だ。そこでなぜ「価値」はよくて、「ドバイ過ぎる」ことはだめなのかをアナは話してくれた。

WSJ:ファッションが流行のムードバロメータであるとすれば、2009年の秋、われわれはどんなところをみれば良いのでしょうか?

AW:デザイナーたちにとって重要なことは怖がらないで、何が安全で何が商業的なのかと不安になりすぎないことね。

今の市場にはたらきかけるものは、服を買う女性たちのクローゼットにないものよね。本質的な価値をもっているものね。正直なところ、商品が多すぎてきたのよ。マネものが多すぎるし、おそらく商業主義的すぎるのね。明快さ、平衡感覚、リアリティが必要だと思う。

WSJ:皆、控えめでありたいと?

AW:ええ。派手すぎる、けばすぎる、ドバイすぎる、何と呼ぶかは自由だけれど、みんなそんな風でありたいとは思っていない。今はそうあるべき時ではないだけよ。ただ、クオリティ、息が長いこと、本当に残るものについては強調しておきたいわね。

今朝、ラルフローレンに行ったの。小さいけれど見事な時計のコレクションをデザインしたデザイナーよ。あなたはその時計をみれるわよ。もし買うならば、残りの人生でずっと持っていられるのよ。

WSJ:ブームの間に、皆商品を買い過ぎたということですか?

AW:ちょっと度が過ぎたと思う。今はとても正しい方向に向かっているわ。

WSJ:いつになったら消費者たちはかつてのように自信をもって買い物できるようになるでしょうか?

AW:近い将来になるとは思わないわね。

WSJ:もうあり得ないと?

AW:決してないとは言ってはいないわ。そんなこと誰が言えるの?馬鹿げてる。わたしは皆が買うものは、その人にもっとよろこびを与えるべきだと思う。長くそして意味をもつものになるから。

WSJ:ファッションの幅により手ごろな価格のものを加えようとしているということですか?

AW:女性たちには夢を抱かせるような、熱望するような服が必要だと思うの。それと高価なものと安価なもの [ハイ&ロー] を組み合わせたお手本も必要ね。ファースト・レディは確かそんな服装をしているわよね。組み合わせなのよ。インデックスのページについて、わたしたちは価格と価値によりシビアになっているわね。そして自問するのよ「このバカ高い値段のタグの価値はあるのかしら?」ってね。

それだけの価値がなかったもの?名指しすることはないわよ、でもスパンコールで装飾されたものもあったわ。あなたのここ[腰を指さす]までも降りてこないようなものよ。

WSJ:ミシェル・オバマオバマ政権は今のところファッションの世界にどんな影響を与えていますか?

AW:うまくいけば、政府の財政援助政策は経済に良い効果をもたらすかもしれないわね。それでも、すぐに効果があらわれると考えるのはばかげていると思う。

以前のファースト・レディはある種のユニフォームのを着るひつようがあると思っていたように感じたわね。反対にミシェル・オバマはファッションが好きだし、ファッションを楽しんでいると思う。彼女はハイ&ローの組み合わせを楽しんでいるし、新しいデザイナーも好んでいる。ファッション業界にとってはこの上ないことよね。

WSJ:個人的にファースト・レディの着こなしにインスピレーションをうけますか?

AW:彼女は着こなしがとても美しいわ。いつも服は彼女の一部になっている。とても新鮮だし、世界中の女性たちに元気をくれる。

オバマ政権がこれまでと違うところは、わたしが言っているのはここでは厳密にファッションのことよ、ファッションを楽しんでいるというところ。以前にもワシントンの素晴らしい人たちと仕事をしたことがあるけれど、彼らは服装に関してナーバスで、批判されることにもナーバスで、ファッションについて真剣にあつかわれることがなかった。

ワシントンはとても保守的なままだったのよ。でも今わたしたちには美しく、素晴らしいファースト・レディがいる。ファッションを愛していて、楽しむことができる人よ。そのメッセージをアメリカ中の女性に送り続けている、女性たちはきれいな服をきても、きちんと扱われるのよ。

WSJ:CFDA/Vogue Fashion Fund をつくったことで、資金面でもアドバイザーとしても若いアメリカ人デザイナーを手助けしています。このような厳しい状況で何故若いデザイナーたちを援助することが可能なのですか?

AW:編集者とスタッフはあと10日以内にその仕事をしなければならないのよね。先見の明をもつ必要があるし、デザイナーを援助して、コレクションを保つことに集中しなければならばい。クオリティを維持することもとても重要。すべてが突然に起こるなんて安易なことにはならないのよ。
 
この業界は何と寛大なところなのだろうと言わずにはいられないわね、若い才能を援助するなんて。信じられないくらいに素晴らしい人たちよ:パトリック·ロビンソン、ケイトとアンディ·スペード、アンドリュー·ローゼン、リードクラッコフ、ダイアン[フォンファステンバーグ、アメリカファッションデザイナーズ評議会の会長]。美容業界でもそう。そうした援助に恩恵があると信じているのね。これまで後戻りしたことはない、それが注目すべき点だと思う。

WSJ:成功を収めている新しいデザイナーたちの多くが今も悪戦苦闘している場合、ファッションを学ぶ学生たち、彼らはデザイナーとして成功したいわけですが、彼らに何をアドバイスしますか?

AW:ファッションスクールを卒業した若い人たちには自分のコレクションを始める前に真剣に考えることが大切ね。

みんなデザイナーになりたいし、次のカルバン・クラインや次のラルフ・ローレン、次のマイケル・コースになりたいと思うけれど、それは現実的ではない。若い人たちにはもっと学ぶことが大切ね。オスカー・デラレンタやキャロリーナ・ヘレナから学んだり、誰か教えてくれる人から学ぶことが大切なのよ。

WSJ:多くの有名なデザイナーがH&MやTargetのような安価で格好の良い店の服をつくっています。単にデザイナーたちは低価格のラインを自分のブランドでつくれば良いのでないですか?デザイナーたちはファストファッションの調達屋たちに屈していると思いますか?

AW:Targetからの売り上げと露出という意味ではとても助けになっていると思う。デザイナーたちが安価なリテイラーたちに屈しているというのには同意できかねるわ。もしそんな状況なのだとしても、わたしは絶対に応援するわよ。

ファッション・ファンドを通してのコラボレーションの一つはGapとのものよ。受賞者はクラシックなホワイトのシャツに自分の味を加えるの。Gapは世界中からデザイナーを集めているし、そのシャツを着た若いモデルたちの写真を撮るの。シャツは見事なものなのよ。